既に分譲マンションにお住まいの方はよくご存知のことと思いますが、住んだことのない方は分からない事も多いと思います。
このシリーズでは、分譲マンションとは、区分所有法、敷地の権利と敷地権、管理組合と管理会社、管理費等と修繕積立金、マンションの構造と音の問題、長期修繕計画と大規模修繕工事、マンションのメリットとデメリット等について書いていこうと思います。
第7回目は「長期修繕計画と大規模修繕工事」について書いてみます。
長期修繕計画
分譲マンションの長期修繕計画とは、建物の劣化に伴う修繕工事の実施時期と費用を、30年以上の長期にわたって計画したもののことです。
長期修繕計画の4つの要素
-
-
- 建物の劣化状況
- 修繕工事の内容
- 修繕工事の実施時期
- 修繕積立金の収支計画
-
建物の劣化状況は、専門の業者による調査を実施して、外壁・屋根・基礎・設備など、各部位の劣化状況を把握します。修繕工事の内容は、建物の劣化状況に基づいて、必要な工事内容と工事費用を算出します。修繕工事の実施時期は、建物の劣化状況と修繕工事の内容に基づいて、工事の優先順位を決め、実施時期を定めます。修繕積立金の収支計画は、修繕工事の実施時期と費用に基づいて、毎月の修繕積立金を算出します。
長期修繕計画は、マンションの管理組合が作成し、区分所有者全員の同意を得て、定款に記載する必要があります。
長期修繕計画の作成は、マンションの管理組合にとって非常に重要なものです。長期修繕計画がなければ、必要な修繕工事を実施する資金が不足したり、修繕工事の時期を逃したりする可能性があります。また、修繕工事の内容や費用を区分所有者間で十分に共有できていない場合、トラブルに発展する可能性もあります。
長期修繕計画の作成に際して生じる問題点
-
-
- 専門的な知識や技術が必要なため、作成が難しい
- 修繕工事の費用は、物価や技術の進歩によって変動するため、計画通りに実行できない可能性がある
- 区分所有者間で、修繕工事の時期や費用について意見が対立する可能性がある
-
これらの問題点を解決するためには、以下の点に注意が必要です。
専門の業者に委託して、作成を支援してもらう
修繕工事の費用について、将来の変動も考慮した計画を立てる
区分所有者間で、修繕工事について十分な情報共有と合意形成を図る
長期修繕計画は、マンションの資産価値を維持し、安全で快適な暮らしを守るために欠かせません。管理組合は、これらの問題点を意識しながら、長期修繕計画の作成・運用に取り組むことが重要です。
大規模修繕工事
分譲マンションにおける大規模修繕工事とは、建物の劣化に伴う修繕工事のことです。外壁・屋根・基礎・設備など、建物の主要な部位の修繕工事を総称して「大規模修繕工事」と呼びます。
大規模修繕工事のつの目的
-
-
- 建物の安全性を確保する
- 建物の機能性を維持する
- 建物の価値を維持する
-
大規模修繕工事の実施時期は、一般的に築10~12年を目安としています。しかし、建物の立地や気候、使用状況などによって、劣化状況は異なるため、建物の状況に応じて、適切な実施時期を判断する必要があります。
大規模修繕工事の費用は、マンションの規模や工事内容によって異なりますが、一般的に1戸あたり数十万円から数百万円程度の費用がかかります。費用は、修繕積立金から支出されます。
大規模修繕工事の工事内容
-
-
- 外壁塗装
- 屋上防水工事
- バルコニー防水工事
- 給水管・排水管の更新
- 電気設備の更新
- エレベーター・エスカレーターの更新
- 防災設備の更新
-
大規模修繕工事実施の際に生じる問題点
-
-
- 修繕積立金の不足
- 区分所有者間の合意形成の難しさ
- 工事の品質や価格のトラブル
- 工事費の値上がり
-
修繕積立金の不足は、大規模修繕工事の最大の問題点です。
修繕積立金は、毎月の管理費等と一緒に集金され積み立てられていますが、滞納や、修繕積立金の運用損失などによって、不足する可能性があります。
区分所有者間の合意形成の難しさも、大規模修繕工事の課題です。大規模修繕工事には、費用や工事内容などについて、区分所有者間で十分な合意形成が必要です。しかし、区分所有者間の意見が対立するケースも少なくありません。
工事の品質や価格のトラブルも、大規模修繕工事において発生する可能性があります。工事の品質が悪いと、建物の資産価値が低下したり、安全性が損なわれたりする可能性があります。また、工事価格が予定よりも高額になるケースも少なくありません。
これらの問題点を解決するために、以下の点に注意
-
-
- 修繕積立金を適切に積み立てる
- 区分所有者間で十分な情報共有と合意形成を図る
- 信頼できる業者を選ぶ
-
大規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持し、安全で快適な暮らしを守るために欠かせません。管理組合は、これらの問題点を意識しながら、大規模修繕工事の計画・実施に取り組むことが重要です。
具体的な対策
-
-
- 管理費の滞納対策を講じる
- 修繕積立金の運用方法を検討する
- 区分所有者向けの説明会やアンケートを実施する
- 複数の業者から見積もりを取る
-
また、国土交通省では、マンション管理適正化法に基づき、大規模修繕工事の円滑な実施を支援するための制度を整備しています。
国土交通省の支援制度
-
-
- 長期修繕計画の作成・運用支援
- 大規模修繕工事の見積もり比較支援
- 大規模修繕工事の品質確保支援
-
管理組合は、これらの制度を活用することで、大規模修繕工事をよりスムーズに実施することができるかもしれません。
参考
国土交通省 マンション管理についてhttps://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
国土交通省 報道発表資料(「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しについて)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001425184.pdf
国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(PDF)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001600153.pdf
国土交通省 マンション管理についてhttps://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
NHK マンション修繕費などの積立金不足で専門家検討会 国土交通省
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231030/k10014241941000.html