東京都内の新築マンションの平均価格が1億円を超えたという話は聞いたことがあるだろうか。
2024年4月に不動産経済研究所が発表した2023年度の「首都圏新築分譲マンション市場動向」の調査によると、東京23区内の平均価格は前年度から5.7%upし、1億464万円となっている。
参照:2024.04.18 首都圏新築分譲マンション市場動向2023年度(2023年3月-2024年3月)
今回は価格上昇の背景と今後について考察する。
〇建築コストの上昇
価格高騰の理由の一つに、建築コストの上昇が挙げられる。
出典:一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建設資材物価指数」
一般社団法人 建設物価調査会の調査から、建築資材は2021年ごろから価格上昇が続いており、2022年には急騰、2023年も変わらず上昇傾向である。また、円安の影響から、輸入資材も価格が上昇している。
〇円安による海外投資家の購入活発化
円安により日本の不動産が購入しやすくなったことで、海外投資家の購入が活発になったことも価格上昇の要因といえる。
直近で投資不動産に強い不動産業者から話を聞く機会があったが、現に海外投資家による購入案件が増えているとのことだ。
〇新築マンションの供給数の減少
新築マンションの供給数が減少傾向であり、希少性が増したことも価格上昇の要因だろう。
不動産経済研究所が公表している「首都圏新築分譲マンション市場動向」 によると、首都圏の新築マンション供給数が2017年度時点では、36,837戸に対し、2023年度では26,798戸と約10,000戸近く供給数が減少していることがわかっている。
◇今後のマンション価格の動向について
マンション価格の高騰がいつまで続くのか気になる人が多いだろうが、少なくともすぐに価格が減少する可能性は低いといえる。
理由の一つに、新築マンションの建築コストが今後も上昇していくことが想定されるからだ。建築コストに影響を与える人件費については、2024年の4月から建設業で時間外労働の規制が強化されるため、その影響で人件費も上昇することが予想される。また、資材価格は価格上昇が緩やかになってきているが、今後価格減少に転ずるかは、現時点では不透明である。
居住用としてマンション購入を検討する場合、金利の動向に要注意だ。日銀はマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決定している。固定型の住宅ローンでは長期金利が上昇傾向であり、すでに引き上げの動きがみられる。購入の判断は、ご自身で工面できる自己資金をもとに、不動産会社、金融機関などと相談するのが良いだろう。
文:東京支店 向原弘樹