首都圏の中古マンション市場において、東京都心とその周辺地域では価格の動きに明確な差が見られます。特に埼玉県、千葉県、神奈川県といった周辺3県では、価格の下落が顕著になっています。
上記は、首都圏の中古マンション価格の前年同月比変動率データを基に作成したものです。東京都は中古マンション価格が上昇傾向なのに対し、周辺3県は下落傾向にあります。周辺3県では、市場に滞留する在庫物件も過去最多を記録し、売却が進まない状況が続いています。
今回は、東京都心と周辺地域の中古マンション価格の動向について考察していきます。
〇周辺3県の下落要因は?
市場特性の違い、住宅ローン金利の上昇
下落原因の一つに買い手の特性が違うことが考えられます。
東京都心部:海外投資家や富裕層がメイン。
周辺3県:自ら居住するために購入する実需層がメイン。
マンション価格の上昇に伴い、特に実需層の購買意欲が低下しています。東京都心部のマンション価格が急騰し、それに引っ張られる形で周辺地域の価格も高騰しましたが、住宅ローン金利の上昇により購入者が慎重になっています。
2024年3月に日銀がマイナス金利を解除し、住宅ローン金利の引き上げが懸念され、特に実需層を中心に市場での購買意欲が低下しているのだと思われます。
〇主要駅と郊外の価格動向:地域格差の拡大
周辺地域の中古マンション市場では、主要駅周辺の物件はまだ一定の需要が見られますが、駅から離れると価格の下落が加速しています。埼玉県の大宮駅周辺の物件は2024年9月時点で前年比17.5%の価格上昇を記録していますが、隣駅のさいたま新都心駅では3.3%の下落が確認されています。
神奈川県でも同様の傾向が見られ、横浜駅周辺は12.2%の価格上昇を示す一方、桜木町駅や関内駅ではそれぞれ2.9%、2.4%の下落となっています。このように、駅周辺と郊外の物件間で価格差が広がりつつあり、立地条件が売買における重要な要素となっています。
〇 東京都心部の中古マンション:富裕層と海外投資家の影響
一方で、東京都心部の中古マンション価格は上昇を続けており、実需層にとっては手が届かない価格帯にまで達しています。2024年8月のデータでは、東京23区の中古マンションの平均売り出し価格が7750万円と、前年同月比10.2%の上昇を記録しました。特に人気の都心6区では22.3%もの上昇率を示し、1億2756万円に達しています。
東京都心部の市場では、富裕層や海外投資家が主要な購買層となっており、これらの層は金利上昇に対しても影響を受けにくいとされています。ローンを組まずにキャッシュで購入することが多いため、金利動向による影響を受けず、価格上昇が続いていると考えられます。
〇今後の市場展望:都心と周辺地域の価格差はさらに広がるか?
今後も東京都心と周辺地域のマンション価格差については拡大する可能性があります。実態経済として、マンション価格のインフレに経済が追い付いていません。賃金上昇がマンション価格帯に追いつかない限り、都心部の高騰が続く一方で、周辺地域では価格の上昇が頭打ちとなり、今後も価格下落が続くでしょう。
加えて、新築物件が供給されることで、中古マンションの競争力が低下する可能性も高く、特に郊外ではさらに厳しい状況が続くことが予想されます。今後、投資家にとっては都心部の物件が依然として魅力的な投資先となる一方で、実需層にとっては価格と金利の動向を注視する必要があるでしょう。
文:東京支店 向原
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参考資料 東京カンテイ プレリリース 中古マンション価格 2024年9月24日https://www.kantei.ne.jp/report/70m2/1381
東日本流通機構 レインズデータライブラリー http://www.reins.or.jp/library/
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